「誰もが安心して暮らせる地域社会をつくる」——そんな思いを胸に、福岡市では地域共生社会の実現に向けた取り組みを進めています。その一つが、地域共生推進員という存在です。 
彼らは、地域で様々な相談を受けている民生委員・児童委員(以下、「民生委員」という)の皆さまの困りごとに寄り添い、必要なサポートを行う“チーム”として活動しています。 

①地域共生推進員とは

地域共生推進員は、福岡市社会福祉協議会に配置された職員です。 
地域で活動する民生委員の皆さんから寄せられる相談の中で、「どこに相談すればよいかわからない」「複数の課題が絡み合っていて対応が難しい」といった世帯を一緒に支えます。 
地域の他の関係者や支援機関と連携しながら、地域全体で支える体制づくりを進めています。 

地域共生推進員とは

②日々の業務と支援の流れ

地域共生推進員の業務は多岐にわたります。 
電話や会議等の場で民生委員から相談を受けると、状況を聞き取り、助言や情報提供を行います。
必要に応じて民生委員と一緒に、支援が必要なご家庭を訪問し、本人や家族の話を丁寧に聞き取ります。そのうえで、生活困窮、障がい、介護、子育てなど、様々な課題に応じた支援機関と連携し、継続的な支援につなげていきます。 
   支援対象者の不安を和らげるため、初回訪問はできるだけ民生委員と同行するなど、信頼関係を築く工夫も欠かしません。 
  民生委員からは、「様々な事例や対応方法を聞くことができて、勉強になった」「福祉制度について、対象者へ分かりやすく説明してもらい、助かった」などの声をいただいています。

③地域共生推進員へのインタビュー 

地域共生推進員へのインタビュー

地域共生推進員からお話をききました。

――社会福祉協議会へ入職したきっかけや、現在の業務内容について教えてください。
――地域コミュニティが根付いた地域で育った私にとって、地域住民とともに福祉のまちづくりに取り組む社会福祉協議会の活動は、まさに自分の関心と重なるものでした。
入職後、地域共生推進員として活動して3年目になります。民生委員さんとも協力し、地域を回りながら、地域の困りごとを支援に繋げる仕事をしています。

――地域共生推進員としてのやりがいを教えてください。
――支援にあたっては、ご本人の想いや希望などをしっかりと聞いて、希望を実現するための方法を一緒に考えます。それが実を結び、ご本人と達成感や喜びを分かち合えた時にやりがいを感じます。また、ご本人と関わる過程で 「今、困っていること」ばかりに目を向けがちですが、「好きなことや得意なこと」についても把握し、ご本人の興味や自信につながる支援を行うことができた時には、「この仕事を続けて良かったな」と感じます。

――これまでに対応が難しかった事例はありますか?
――ご本人が支援の必要性を感じておらず、直接会うことができない場合は、対応が難しいと感じます。そんな時は、ご本人宛に手紙を投函したり、訪問する時間を変えるなど、色々な工夫をしながら支援に繋げていく努力をしています。

――どのようなことを心がけて業務にあたっていますか?
――自分の困りごとを、誰かに相談すること自体に不安を抱えている方が多いため、勇気を出して相談してくださったご本人の気持ちを受け止め、安心して相談してもらえるよう心がけています。
ご本人に寄り添った支援を行い、信頼関係を築くことが、とても大切だと感じています。

――地域共生社会の実現に向けて、地域共生推進員、社協職員として、今後どのように取り組んでいきたいと思いますか?
――地域共生社会とは、「支え手」「受け手」の関係を超えて、皆で支え合う社会のことだと思います。現在支援中のケースで、過去に子どもと関わる仕事をされていたAさんが「仕事はまだできないけれど、何か役に立ちたい」と話され、活動できる場について地域の方に情報収集を行いました。地域の方からは、「地域の子ども行事のボランティアが少ないので是非手伝ってもらいたい」との声が上がりました。まだ実現には至っていないのですが、今後、Aさんが地域で活動ができるようになれば、Aさんも、地域の支え手として活躍できるのではないかと思っています。
私たちが支援している方々は、「得意なこと」や「強み」をたくさん持っています。「支援を受ける側・する側」という固定的な関係ではなく、互いの強みや力を生かし合いながら、共に地域をつくる。そんな社会が実現できたらいいと思いますし、それに向けてこれからも支援を続けたいです。

④地域とともに歩む福祉のかたち 

地域共生推進員の活動は、単なる制度の紹介や支援の橋渡しだけではなく、相談者の背景や思いに寄り添いながら、地域の中で安心して暮らし続けられるよう、人と人とのつながりを創る役割も担っています。 
社会的な課題が複雑化・複合化していると言われる現代社会において、制度の網からこぼれ落ちそうな人にも支援の手を届けるよう、地域共生推進員はこれからも、民生委員と連携しながら、「誰もが安心して暮らせる地域社会」を目指し、活動を続けます。

記事作成:福岡市福祉局生活福祉部地域共生課