福祉の相談支援という仕事は、利用者の心に寄り添い、支援を通じて地域を動かす力を持っています。今回は、東区第1障がい者基幹相談支援センター(※)で長年活躍する相談支援専門員の声を通して、やりがいや葛藤、そして未来への願いをお伝えします。

※区障がい者基幹相談支援センターは市内14か所に設置。学齢以上の障がい児・者等を対象とする24時間対応の一次相談窓口で、地域の障がい福祉サービス事業所等関係機関との連携を図るなど、地域の体制づくりを実施しています。

<登場人物>

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池田顕吾さん
東区第1障がい者基幹相談支援センター 管理者
特別支援学校の教員になるため大学・大学院で障がい児教育を専攻。学生時代にかかわった自閉症の青年との交流が大きな転機。毎週一緒に余暇活動を過ごすなかで、「障がいは治せないからこそ長期的な支援ができるほうがよい」と感じ福祉の道へ進むことに。入所施設や生活介護を経験後、平成17年から現在まで相談支援業務に従事。

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松本 直さん
東区第1障がい者基幹相談支援センター 主任コーディネーター
商学部を卒業後、広告業界に就職。学生時代の福祉ボランティア経験や人とのかかわりの楽しさが原動力となり、通信教育で資格を取得し福祉業界へ転職。現場経験を重ね、法人内異動で平成27年から相談支援業務に従事。

地域の声に耳を澄ませて

――相談業務のやりがいは。
松本さん:初めは相手の方も「この人誰?」みたいに警戒されるんですけど、何度か支援や訪問を続けるうちに、徐々に心を開いてくださってご本人の思いを聞ける瞬間があるんですね。その思いに寄り添って支援ができることが、自分にとってはやりがいになっています。

池田さん:福祉分野だけでなく医療や司法、地域など関係者と連携しながら、職種を超えた協力体制を築けるのが基幹センターの魅力です。自らの働きかけが制度や仕組みに反映されたり、事業所が一歩踏み出して支援を始めたりすると、地域づくりに関与できてよかったと感じますね。

――業務においてどんなときが大変ですか。
松本さん:一番きついと感じるのは、社会資源が足りないときですね。本人の希望があっても、受け皿がないことがある。本人の希望に添えなかったり、ご家族も必死なのに答えが出せなかったりするときは辛いです。

「東区第1障がい者基幹相談支援センター」の様子
「東区第1障がい者基幹相談支援センター」の様子

まず動いてみる、そこからはじまる支援

――相談業務の姿勢や人材育成についての考えは。
松本さん:私たちは「まずやってみる」が基本なんです。事前にリスクを考えて動かないよりも、動いてみて課題があれば修正する。現場の職員の自主性を尊重しながら、一緒に方向性を確認しています。

池田さん:センター内では、事例を共有しながら支援方法を検討する学びの場も継続して設けてきましたし、それぞれが自分で考える力を育てたいと思っています。「うちではできないかも」ではなくて「まず受けてみよう」というスタンスを大事にしています。

松本さん:そして、相談されるには、話しやすい雰囲気をつくる努力も必要ですよね。私自身それは意識していますし、他機関からの問い合わせも気軽に受けられるようにしています。

センター職員の集合写真
センター職員の集合写真

未来の福祉人へ

――最後に、福祉を目指す人へメッセージを。
松本さん:福祉に限らず、今まで学んできたことは必ずどこかで活かせます。私も商学部出身ですが、今の仕事にちゃんとつながっています。興味があれば、ぜひ飛び込んでみてほしいですね。

池田さん:私も同感です。「誰でもできる仕事」ではなく、「福祉のプロ」としての意識を持ってほしい。技術を高めていくことで、福祉の価値も上がると信じています。そして、自分たちが社会の「架け橋」になりたいですね。障がいがある方にとっても、地域に飛び込むことは勇気のいること。そこに寄り添える存在でありたいです。

地域の人々が安心して暮らせる社会を目指して。相談支援専門員は、人の気持ちに寄り添いながら目の前の一人に真摯に向き合い、社会を一歩ずつ前へ動かしていきます。

縁あってセンターの一員になった猫「みゆき5世」
縁あってセンターの一員になった猫「みゆき5世」

記事作成:福岡市福祉局障がい者部障がい在宅福祉課