◆間違えても「大丈夫」と言い合える社会を目指して
南区若久にある「カフェ五福の家」で、9月21日(日)に「注文を間違えるかもしれないカフェ五福の家」というイベントが初めて開催されました。今回は、9月21日の「世界アルツハイマーデー」にあわせて、全国32か所で一斉に「注文を間違える料理店」が実施され、「カフェ五福の家」も参画することとなりました。認知症の方がスタッフを務めるイベント型のレストランで、たとえお客様が注文したものと違うものが提供されても「まぁ、いっか」と思える、寛容さやおおらかさを社会に広めようという趣旨です。
醤油問屋「五福」の跡に今年オープンした「五福の家」は、誰でも利用できる地域共生型の多機能な福祉拠点です。カフェや自立援助ホーム、福祉関連の3団体のシェアオフィスが入っており、子どもから高齢者、障がい者などさまざまな人たちが集える場として、地域の皆さんに親しまれています。

◆いつもカフェに集まるお客様が今日は「おもてなし」
週3回オープンしている「カフェ五福の家」は、注文をしてもいいししなくてもいい、誰でも気軽に立ち寄れる場所。スタッフとお客様の距離が近いのが特長です。テーブル席だけでなく、小上がりスペースもあるので子育て中のお母さんが集まったり、おひとり暮らしの方がここに来てスタッフとおしゃべりに花を咲かせたり。学校帰りの子どもたちは、カフェで宿題をして家に帰っているそうです。
カフェを運営する福岡福祉向上委員会の大庭欣二さんによると、常連客から「いつかカフェを手伝いたい、ボランティアをしたい」との声をいただくことが多く、今回の「注文を間違えるかもしれないカフェ五福の家」では、お客様がスタッフとして参加するイベント実現に至ったそうです。参加スタッフは13名。五福の家らしく、子どもや高齢者、親子、障がい者などさまざまな方々に参加いただきました。


通常のカフェで出しているソフトドリンクや焼き菓子に加えて、このイベントから新メニューとして五福醤油の味を復刻した「五福復刻みたらし団子」「五福伝承みたらしバニラアイス」が販売されました。イベントがあると聞いて新宮町から訪れたお客様は、「お子さんが接客をされると明るくなるし楽しくて、とてもいいですね」と、スタッフの皆さんが一生懸命なところ、手順をしっかり覚えて接客してくれるところに感動したそうです。「五福の家のようなカフェを始めたい」とこれからの夢を話してくれました。

◆得意とすることを補い合いながら楽しんで接客
今回参加したスタッフは「てへぺろスタッフ」と呼ばれているそうです。ちょっと間違えても「“てへぺろの精神”で許してね」と認めあえる社会であるように、との思いが込められています。大庭さんによると、お客様の中には、高齢でもまだまだ元気で「働きたい」という人や、障がいのある方で「何か人の役に立つことをしたい」と考えている方もいるそうです。しかし、社会ではその機会が少ないのが現状。「今日をきっかけに、そういう方々に『誰かが喜んでくれて嬉しい』と感じてもらえれば」と話してくれました。
接客マニュアルはイベントの1週間前に完成し、スタッフの皆さんに配布されました。役割と手順を先にお伝えすることで、「スタッフの皆さんの不安をやわらげ、今日に向けての心の準備をしてもらい、イベントを楽しい思い出にしてほしかった」と大庭さん。また、「お互いに得意とすることを補い合うのがあたりまえなのだと体感してほしい」と、当日は2人1組で接客にあたったそうです。大庭さんは「失敗することもあるけれど、笑って許容してもらえる文化が、南区の若久から社会に広がっていくことを願っています」と話されました。

◆お客様とのふれあいを楽しみに参加したスタッフの皆さん
今回のイベントに「てへぺろスタッフ」として参加したさくらさん(中学生)とさくらママ。「イベントでみんなと触れ合えるのと、みんなに絵を見てもらえるのを楽しみにしていました」とさくらさん。さくらさんは画家としても活動していて、イベント限定でカフェの壁面やテーブルに、さくらさんが描いた海や夜空などをモチーフにした絵が飾られ、お客様の目を楽しませていました。さくらママはとても緊張したそうで「オーダーを本当に間違えていいのか心配で、昨日は家で練習していました」と話してくれました。

バリアフリーの情報サイトを運営している、「てへぺろスタッフ」のたけさんは、普段からよく五福の家を訪れているそうです。「お客さんとして来ている時はのんびりしているほうが好きですが、スタッフとして参加する時は賑わっているほうが楽しいですね」とたけさん。子どもたちもいて活気があるし、お客様がおだやかな目で見守ってくださっているのが嬉しいとのこと。たけさんは中途障がいで、怪我で車いす生活になりました。「中途障がいは自分の居場所が一回なくなるんです。なので、今日のようにスタッフとして自分が存在していい場所があるのはありがたいなと思います」と話していました。

◆さまざまな背景を持つ人の縁が広がる場所でありたい
福岡市社会福祉協議会の栗田将行さんは、今後の五福の家の在り方について「高齢者だから、障がい者だから、外国人だからと属性でものを考えるのではなく、同じ生活者で同じ住民であるというメッセージを発信したい」とのこと。カフェ五福の家はデイサービスでも、ヘルパーステーションでも、ビジネスとしてのカフェでもないインフォーマルなサービス拠点です。人の孤独や悩みに寄り添うこと自体を目的とした制度がないからこそ、「新しい課題に柔軟に対応していく民間施設を目指しています」と話してくれました。
大庭さんは「ここが、あらゆる人にとって居心地の良い場所であってほしい」と言います。いろんな人たちに遠慮なく来てもらって、「スタッフと気兼ねなく話したり、お客様同士の縁が紡がれたりする場所になることを願っています」。
今後も「五福の家」では、さまざまな人たちが集まることができるイベントを開催する予定です。
カフェ五福の家
毎週火・木・土 11:00 ~ 17:30
※お車でお越しの方は専用の駐車場をご利用ください。
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記事作成:福岡市福祉局総務企画部福岡100推進課